教授挨拶
greeting

- 教授
最適医療の実践と次世代医学の創生
そしてそのための人材育成
2023年1月より岡山大学消化器・肝臓内科教授に就任いたしました大塚基之です。
就任から2年余が経過したいま、改めて私たちが目指している方向性と、これまでの歩みとこれからについて、ご紹介させていただきます。
臨床と研究と教育と
岡山大学消化器・肝臓内科では、肝臓・胆膵・消化管すべての消化器内科領域において、
- いまある最適な医療を提供する
- 次世代の医学・医療を創造する
- それらを実践する人材を育成する
この三つの使命を、教室員一同、力を合わせて推進しています。
就任時挨拶にも記載しましたが、大学病院の使命は、1) 目の前の患者さんに最適な医療を提供するとともに、2) 医療をさらに良いものにするべく研究成果を発信し、そして、3) それらを実践できる人材を育成するという3つの大きな柱からなります。
私たち岡山大学消化器・肝臓内科は、これまで同門の先生方が築いてきた「伝統」を踏まえつつ、「いま」と「未来」のために、この「3つの使命」を消化器内科領域で真摯に進めています。
これまでの歩み
就任から2年余のあいだ、当教室は着実な歩みを重ねてまいりました。
- たいへん嬉しいことなのですが、入局希望者が着実に増加し、留学生も加わって、新たな仲間とともに教室が進み始めています。
- 国内外に向けた論文の数が増えただけでなく、質が向上し、これまで以上にインパクトの高い研究成果を次々と発信しています。
- 教室の先生方が大型外部資金を獲得できるようになり、教室全体としてチャレンジングな研究活動を推進しています。
- 質の高い前向き臨床研究の推進・質の高いエビデンスの創出を志す意識が教室全体に定着しました。
- 超音波内視鏡下エタノール注入、内視鏡AI、新規粘膜下局注剤、大腸ポリープに対する新規染色剤の有用性の提唱、アカラシアに対するR-POEM法の開発など、実臨床を変える成果が様々な形で教室から出てきています。
- 「神経内分泌腫瘍センター」を立上げ、岡山大学病院内に神経内分泌腫瘍に対する総合的な診療体制を構築しました。
- 「岡山膵癌プロジェクト」を立ち上げ、地域医療機関の先生方と連携し、膵癌の早期診断・治療導入に向けた新たな枠組みを構築しつつあります。
- 「がん薬物療法グループ」を新設し、複雑化する癌の個別化治療に即した診療体制の強化を図っています。
- MASLD診療のエキスパートを迎え、肝臓臨床の裾野をさらに広げる取り組みを進めています。
ここに紹介した事項はこれまでの歩みの一部ですが、その延長線上で、教室の先生たちがそれぞれ日々成長し自己実現を達成していくのを たいへん頼もしく感じています。
これからの歩み
就任時挨拶にも記載したことですが、上記の取り組みを基にして、私たちはさらに前進します。
1) 「Providing the best practical care」
目の前の患者さんに最適な医療を提供することは大学病院の重要な使命です。特に消化器内科は知識だけでなく侵襲のある高度な診療技術も必要とする診療科です。医学は万能ではなく常に発展途上ですが、日々進歩している医療の中で、最新の技術をいち早くとりいれて、現時点でとりうる最適な医療を実践し、大学病院だからこそできる高度な医療を安全に提供する・・・それによって目の前にいる患者さんに貢献できるよう、日々努力していきます。私はこれを「“強い臨床”の提供」と呼んでいます。
2) 「Innovation & Contribution」・「革新と貢献」
基礎研究の成果が実際に臨床現場に還元されるには時間がかかります。しかし、「いまの最善の医療」の多くは「過去の研究成果」の礎のもとに成り立っています。消化器内科分野にかぎっても、例えば、ヘリコバクターピロリの除菌、B型肝炎やC型肝炎の抗ウイルス薬、数ある分子標的薬、PD-1/PDL1をはじめとした免疫チェックポイント阻害剤、がんゲノム医療等、具体例には事欠きません。いっぽう、基礎研究だけでなく、日々の臨床を振り返り、近い将来さらに最適化した医療を提供するためにも、質の高い臨床研究を実践し発信することも極めて重要です。私たちは、目の前の患者さんに最適な医療を提供するだけでなく、臨床研究や基礎研究を通じて「医学・医療に『革新』をもたらし、未来の人々・患者さんのために『貢献』する」ことも重要な使命と考えています。「革新と貢献」・・・これは以前から持ち続けている心構えです。
3) 「Best among the best」
私が過ごした中学高校のモットーに “Best among the best” という言葉があります。文字どおりの意味ですが、岡山大学消化器内科でも個々のスタッフがbest among the best になれるよう、そしてその結果として組織としてもbest among the best になれるような体制をつくっていきます。教室の先生方には「医療・医学の革新や患者さんへの貢献」につながる各個人の夢を持ってもらい「“面白い”と感じることに没頭でき、わくわくできる体験を通じて成長し、世界へ羽ばたいていける」、そういう先生方の「自己実現」をサポートできる環境を整えていきます。
「臨床と研究と教育」という大学病院での使命を達成するには、必然的に幅広いタスクをこなさなければなりません。それだけ負担も大きくなります。しかし、様々なタスクがあるぶん、各自それぞれ熱中できることを見つけることができます。消化器内科分野で言えば、それが内視鏡技術を極めることであっても、薬剤選択の妙を会得することであっても、molecular gastroenterology の確立であっても、尖った教育法の実践でもよいのです。多様性は力です。岡山大学消化器・肝臓内科では、多くの教室員に多彩な個性を発揮してもらい、それらを持ち寄ることで、ワクワクしながら共に「革新と貢献」を実践していきたいと思います。
進路に迷われている先生は、ぜひ一度、私たちの教室を訪ねてみてください。
上記の理念を共有できる方であれば、学閥も背景も問いません。多様性大歓迎。未来を創るために共に挑戦できる先生を、私たちは心よりお待ちしています。
同門の先生方、関連病院の先生方におかれましては、これからも岡山大学消化器・肝臓内科の新たなる挑戦に、変わらぬご支援を賜りますようお願い申し上げます。
(2025年5月 記載)